(17)糖尿病とお酒
 お酒は必須の栄養ではありませんが,人間の生活に深く浸透していますので,一般的に可否を断定するのが難しく,糖尿病の病状や合併症の有無によってもことなり,医師によりかなり指導方針の相違もありますので,飲酒に関しては必ず主治医に相談してください。 

1.お酒の種類によって,糖尿病に対する影響に差がある
  でしょうか?


 お酒は種類によりアルコール以外の成分を含んでいるものがあります。しかし,その量やカロリーは大量のお酒を飲まない限り,さほど大きいものではありませんので,問題になるのはアルコールです。
 お酒は種類によりアルコールの含量に差がありますので,おおよその濃度を知っておいてください。

お酒の種類アルコール濃度目安
(1単位=10g=71kcal)
ウィスキー平均35%30ml
(ウィスキーグラス1杯)
日本酒平均15%1/3合
ワイン平均11%75ml
(ワイングラス1.3杯)
ビール5.0〜6.0%中瓶の1/3
(目安で銘柄により差があります)

2.お酒の効罪
 大量の飲酒は糖尿病でなくても身体に悪いことは医学的に確実です。肝臓病,膵臓病,高血圧,痛風,胃疾患,神経疾患などの原因となったり,悪化させたりします。アルコールに対する感受性は個人差が大きいのですが,ほとんどの人に害がないと思われている量は男性で一日3単位,女性で2単位です。もちろん,すでに飲酒による病気がある方はこの量でも有害です。
 大量の飲酒をしても病気にならない方も希にありますが,普通「お酒に強い」というのは「脳が麻痺しにくい」ことで肝臓などの内臓が強いということと間違えてはいけません。お酒に強い方は沢山飲まれることが多いので病気になりやすいのです。
 一方極く少量の飲酒は動脈硬化を抑制して,心筋梗塞を少なくするという報告もありますが,必ず主治医と相談しましょう。

3.お酒のカロリーは食品のカロリーと同じか?

 アルコールは他の栄養素と同じくカロリーを持っていますが,身体の中での代謝の仕方は他の栄養素と全く違いますので,他の栄養素と交換することはできません。一時,表1の食品と交換する方法を教えた時代がありますが,現在では行われません。また一部の医師はアルコールは体内でカロリーにならないと言っている場合がありますが,これは特殊な場合ですので,やはりカロリーと考えて別枠でカロリーをあまり増やさない程度にとどめてください。

4.糖尿病の場合に特に注意するべき飲酒の問題

 糖尿病の方の飲酒で普通の方と違う注意をしなければならないので必ず指示を受けてください。
@経口剤を服用している場合にはアルコールが干渉することがあります。
Aインスリン注射をしている場合には飲酒の時間によっては低血糖を起こしやすくなります。
B血中の中性脂肪の高くなりやすい人,血圧の高くなりやすい人,尿酸の高くなりやすい人が糖尿病では多いのですが,アルコールはこれらを助長します。
C合併症のある場合は悪影響がありますので,少量でも止めてください。

5.何故,絶対禁酒と指導している場合があるか?

 糖尿病の専門家の中には「絶対禁酒」と指導している場合があります。お酒は少量であれば,気分がほぐれて,精神的に治療に良い効果のある場合もあります。けれども,えてして限度を越えがちなのがお酒です。初めは少しと思っても,飲み始めると多くなりがちです。多くなれば当然色々な具合の悪いことが起こりますし,食事全体が乱れて食事療法がうまくいかない場合が出てきます。
 「絶対禁酒」と指導される先生はこのような患者さんを経験しておられるからなのです。もし,少量で止める自信がなければ,最初から飲まないようにしましょう。