(16)糖尿病の合併症(脳、心臓、その他)
 糖尿病は血管の病気です。血糖の高い状態が続きますと、まず細い血管が侵されて糖尿病性の腎症、網膜症、神経障害といった糖尿病に特徴的な三大合併症が出てきます。
 また、細い血管ばかりでなく太い血管も侵されて動脈硬化が早く進みます。動脈硬化とは血管(動脈)の壁が硬く、もろくなり、血管が詰まりやすくなったり、破れやすくなることで、年をとると程度の差はあれ誰にでも起こってきます。
 動脈硬化を進める危険因子には、糖尿病のほかに高血圧、高脂血症(血液中のコレステロールや中性脂肪が高すぎること)、肥満、喫煙などがあります。糖尿病で血糖の高い状態が続きますと動脈硬化が早く進みます。動脈硬化を予防するためには、血糖のコントロ一ルだけでは十分でなく血圧の正常化、高脂血症の是正,体重の適正化、禁煙などを守り危険因子一つずつ取り除くようにしなければなりません。糖尿病の方で比較的多くみられる動脈硬化による病気に脳卒中、心筋梗塞、足の壊疽があります。

1.脳卒中

 脳卒中には脳を養っている動脈が詰まって起こる脳血栓(脳梗塞)と、血管が破れて脳の中に出血する脳出血があります。糖尿病の方には脳血栓が多くみられます。初めに、手足に麻痺が起こったり、意識を失って倒れたり、言葉が出なくなったりします。脳卒中にならなくても脳を養っている血管に動脈硬化があると、頭が重い、怒りっぽい、物忘れがひどいなどの症状が現れます。脳動脈硬化の程度は、眼底検査、脳のCTスキャン、脳のMRIなどの検査である程度わかります。
 脳卒中で倒れますと、時に生命の危険があるだけでなく、麻痺が続きますと自分が不自由な生活を強いられるばかりでなく家族にも大変負担をかけることになります。日頃から動脈硬化の危険因子を取り除くように心がける必要があります。

2.心筋梗塞
 心臓は全身に血液を送っているポンプで筋肉(心筋)でできています。心筋梗塞は心筋を養っている動脈が詰まって起こります。心筋の一部に血液が通わなくなりますので、心臓の働きが著しく悪くなり、生命にかかわります。また、狭心症は心筋を養っている動脈が痙攣したリ、細くなったりして、一時的に心筋に十分な血液を送ることが出来なくなる状態です。狭心症は心筋梗塞の前ぷれとみることができます。
 狭心症や心筋梗塞が起こると、胸がしめつけられるような痛みが普通ありますが、糖尿病の方の中にははっきりした症状がみられない方がいます。たまたま心電図をとって分かったり、息切れがし易い、冷や汗が出る、脈がとぎれるなどの症状で検査して初めて分かることがあります。心電図など定期的検査がどうしても必要です。

3.足の壊疽
 足に血液を送っている動脈に動脈硬化が起こると、歩いているうちに足やふくらはぎが痛くなり、しばらく休むと痛みが薄らぎまた歩けるといった特有な症状が出ることがあります。これを間欠性跛行と呼んでいます。足の動脈硬化がひどくなると足先の方から血管が詰まり、痛みとともに、壊死を起こしてきます。このような状態を壊疽といいます。動脈硬化による壊疽は痛みが激しいのが特徴です。糖尿病性神経障害による足の壊疽は動脈硬化による壊疽とは異なリ痛みをまったく感じないのが特徴です。
 しかし、糖尿病の方では動脈硬化と神経障害が組み合わさって足の壊疽を生ずることも少なくありません。足の動脈硬化の程度はドプラー血流計、サーモグラフィー、足のレントゲン写真さらには血管造影などで分かります。動脈硬化を予防するためにはその危険因子を取り除く努力を日頃から心がける必要があります。