(10)糖尿病の薬物療法(理論)
 1型糖尿病か?、2型糖尿病か?

 1型糖尿病の人は、膵臓でインスリンがほとんどつくられないので、直ちにインスリン注射が必要です。
 2型糖尿病の人は、食事療法・運動療法をしばらく続けてみて、それでも血糖が下がらない時には、経口血糖降下剤(飲み薬)またはインスリン注射による治療を始めます。2型糖尿病の人でもインスリンをつくる力が非常に低下している時や感染などでインスリンを沢山必要としている時にはインスリン注射が必要です。


薬物療法
1)経口血糖降下剤(飲み薬)

スルホニル尿素剤(SU剤)
ビグアナイド剤(BG剤)
食後過血糖改善剤(αGI)
速効型食後血糖降下剤
インスリン抵抗性改善剤

 スルホニル尿素剤(オイグルコン、グリミクロンやブタマイドなど)は主に膵臓を刺激してインスリンがたくさん出てくるようにする働きがあります。膵臓にまだインスリンをつくる力があるが、十分出ていない人に用いられます。主なっ副作用には低血糖、食欲亢進、体重増加(食事療法が守られない時)があります。
 ビグアナイド剤(メルビンなど)は主にブドウ糖がたくさん肝臓で作られるのを抑える働きがあります。インスリンをつくる力のある人で肥満・過体重の人に用いられます。主な副作用には胃腸障害、まれに意識障害(乳酸アシドーシス)があります。
 食後過血糖改善剤(グルコバイ、ベイスン)は、食べた糖質の吸収を遅らせて、食後の高血糖を抑える働きがあります。食後の高血糖がみられる人に用いられます。主な副作用には腹部膨満、放屁(オナラ)。の増加、まれに肝障害があります。
 速効型食後血糖降下剤(ファスティック、スターシス)は膵臓を刺激してインスリンがたくさん出てくるようにする働きがあります。その働きはSU剤と同じですが短い時間しか働きません。インスリンをつくる力のある人で食後の高血糖がみられる人に用いられます。主な副作用には低血糖、放屁(オナラ)の増加、腹部膨満などがあります。
 インスリン抵抗性改善剤(アクトス)はインスリンの効きを良くする働きがあります。膵臓からインスリンが十分出ているのに、血糖が高い、つまりインスリンが十分働いていない人(多くは肥満・過体重の人)に用いられます。主な副作用にはむくみ、貧血、体重増加、まれに重症の肝障害があります。この薬を飲んでいる人は月1会肝機能検査が必要です。


2)インスリン製剤と注射器具
  
@インスリン注射薬の種類
速効型インスリン
中間型インスリン
持続型インスリン
混合型インスリン(速効型と中間型の混合型)

Aインスリン注射器具
ペン(万年筆)型注射器
   (ノボペン、ヒューマカートペン、ノボレット*、ヒューマカート*)
    *注射液と注射器の一体型
インスリンポンプ
インスリン注射器(40単位用、100単位用)

Bインスリンの注射部位  おなか(腹壁)、ときに大腿外側部、上腕外側部、臀部。
 現在、市販されているインスリン注射薬には多くの種類があり、それぞれ効き方や効いている時間が異なります。なぜインスリン注射が必要なのかを理解していただいた上で、どのインスリンをいつ注射するかは、その人の病態によって医師に決めてもらいます。
 インスリンは確実に血糖を下げますので、効きすぎると低血糖を起こします。医師や看護婦の指導をよく守って下さい。インスリンの注射の量や注射方法を間違えると大変なことになりかねません。