(6)糖尿病の食事療法(理論)
 食事療法は糖尿病治療の基本です。いかに薬をうまく使っても食事が適切でないと糖尿病は克服できません。しかし、現在の糖尿病の食事は、健康な方が通常の生活をするのに必要なカロリーや栄養素のバランスのとれた良い食事なのですから、早く慣れましょう。

1.食事療法はゆっくりと効果がでます。

 食事療法はゆっくリと効果がでてきますし、止めれば後戻りしてしまいますので、続けて行かなければ“もとのもくあみ”になってしまい役に立ちません。食事は毎日毎日三度のことですので“治療”ではなくて生活を改善するのだと考えて下さい。生活を規則正しくすることも、大事なことです。

2.今までの食事を反省してみましょう。

 ご自分でも、今までの食事がどんな内容だったか、また、ご自分の食事が他の人に比べて多いのか、少ないのか、内容がどう違うのかご存じない場合が少なくありません。まず、今までの食事を書き出して栄養士に見ていただきましょう。おやつ、ドリンク、外食も忘れないで下さい。貴方のいままでの食事の量の多寡や質の偏りが分かリますし、嗜好もわかって、これからの食事を指導していただくのに役に立ちます。入院しておられる場合には病院の食事で大体の感じを掴んで下さい。糖尿病の悪い時には空腹感を感じることがありますが、食事療法が効いてきて糖尿病が良くなると、お腹が空かなくなりますし健康な感じになってくるものです。

3.食品の量や中味に強くなろう。

 自分の今までの食事が大体分かったら、食品や食事の量を計ってみましょう。思っているのと随分違う場合があることに気付くことがあるはずです。ごはん一杯でもお茶碗の大きさでかなり違いますし、食品全体と食べる部分では差があります。大体見当がついた、「食品交換表」の出番です。第5版の交換表は食品の写真が実物の1/2になっていますので、大きさの見当がつくと思いますが、実際に計ればさらに正確になります。

4.糖尿病の食事療法の原則

 「摂取する食事の総カロリー(エネルギー)を必要量にとどめ、その中で栄養素のバランスを取る」ことです。絶対食べていけない食品もありませんし、それだけ食べれば後は自由という“健康食品”もありません。
 一日に必要な力ロリーは主に標準体重と運動量(主に職業)により決まります。身体を動かす人はそれだけ必要力ロリーが増えますし、糖尿病が重くて必要カロリーの食事で血糖がコントロ−ル出来ない時には薬剤を使います。
 必要力ロリー計算の基礎となる標準体重は現在の体重ではなく身長(m)の二乗に22を掛けて計算するか、身長と年齢、性から標準体重表を使って調べます。食品交換表では80KcaIを一単位といっていますからこの必要カロリーを80で割った数が必要単位になります。食品交換表には15、18、20、23単位の食事の各表への配分が載っていますので、これに従って各表から食品を選ぷと総カロリーもその中の栄養素配分も丁度よい食事が出来ます。各表の中で同じ単位の食品を好みに従って変えるのは自由ですが、あまり極端に偏らない注意は必要です。野菜の大部分は量を気にしなくてもよい食品で、ビタミンや食物繊維の摂取の上でも大切です。


5.患者さんごとに異なる食事の調節

 必要カロリーは同じ身長、性、年令、運動量でも各個人で若干差があります。したがって、計算した量の食事で治療の効果を見て、調節する必要のある場合があります。また、太った方は標準体重になるまで、すこしカロリーを制限しなければならない場合があります。
 また、他の病気や合併症を持っている方は力ロリーの配分を変えたり、その他の点を注意(塩分、コレステロ一ルなど)したりして、食品を選ばなければならない場合があります。


6.その他

 食事療法だけの方は食事は一日で考えて、あまり偏らなければ配分はあまり厳密でなくてもがまいませんが、薬剤を使っている方は、とくにインスリンを注射している方は一日のカロリー量ばかりでなく、配分や食事時間も大事ですので、あまり変えないようにして下さい。