ステノチーム(in Denmark)医療研修報告
line.jpg

 私たちは、デンマークのステノ糖尿病センターで行われたステノチーム医療研修Practical Diabetologyに参加してきました。日本からは当院スタッフ5名、太田西ノ内病院(福島県)5名、その他オランダ、スロバキア、スウエーデンなどの国からの医療スタッフが参加しました。
 まず、研修先のデンマーク、コペンハーゲン市について簡単にご紹介します。コペンハーゲンはバルト海の入り口に位置するデンマークの首都です。北欧の空の玄関として北欧の中心となっています。また、最近スウェーデンのマルメ市との間に橋がかけられ汽車や車で行き来ができるようになりました。清潔で美しい町並み、運河や狭い小道、豊かな緑と多くの広場が点在し、「北欧の小パリ」と呼ばれます。クリスチャンスボー宮殿を中心にグリーンベルトで囲まれた地域が旧市街です。主な観光スポットは、チボリ公園、人魚姫の像、多くのお城・・・があります。

1.jpg 2.jpg


 研修は、コペンハーゲンから車で20分位のゲントフテという町にあるシェファゴンカンファレンスセンターで、3日間行われ、最終日にはステノ糖尿病センターを見学しました。研修の内容(下記プログラム参照)は、この施設での糖尿病治療についての講義とチーム医療についてのディスカッションが主でした。
 また、研修期間内で患者さんの立場を体験すると言う意味で、3日間自己注射(1日4回注射)と血糖自己測定、検尿を行ってきました。

3.jpg 4.jpg 5.jpg


 ステノ糖尿病センターでは、常時5600人の患者さんが治療を受け、毎年約100人の新患が紹介されています。外来全体では年間のべ約22000人の患者さんが訪れます。患者さんは必要に応じ、12床の入院用ベッド、4床の日帰り用ベッドのある病棟に5日間入院する事が出来ます。日本と比べるとフットケアが大変充実していました。専門の足療法士が常勤しており、是非日本でもデンマークのフットケアを広めたいと話しておりました。眼科の看護婦は、医師の診察前に眼底写真をとりそれを解析し医師の診察が必要かどうか選別できるよう教育されていました。食事療法は、土地柄、野菜が少なく果物を多く食べる習慣があるので、野菜と果物が同種の食材とみなされていました。
 また日本は、1日3食が基本ですが、デンマークでは食事と間食を含めて8食に分割されていました。資材としては、フードモデルや食品交換表が使われていました。血糖自己測定の機械の種類が豊富で、患者さん自身が選ぶ事が出来ます。電子カルテの導入も進んでおり、2年後には全て整う予定だと話していました。デンマークは福祉国家であり、税金が高い分、医療費の保障が充実しており、患者さんは安心して十分な医療を受けられるようになっているとのことです。

6.jpg 7.jpg 8.jpg


研修会プログラム
2000.11月22日-11月24日

第1日−11月22日
09:00イントロダクション
09:20糖尿病の治療方法とその評価
09:45糖尿病--我々が直面している困難
10:50糖尿病のケア---セルフケアと個別化
11:35ディスカッション
11:45ダイエットとフード
12:15ディスカッション
12:20バイキング形式による糖尿病の昼食
13:20グループワーク:糖尿病患者として生活する
16:00グループワーク発表
16:302型糖尿病の治療
17:25成人における学習過程

第2日−11月23日
09:001日目の復習
09:15足のケア
09:45ディスカッション
10:15糖尿病網膜症
10:55ディスカッション
11:10糖尿病腎症
11:55ディスカッション
12:20バイキング形式による糖尿病の昼食
13:05グループワーク:どのような努力により糖尿
病治療を成功させることができるか
  1)医療スタッフ 2)患者
  3)家族      4)社会
14:25グループワーク発表
14:55ステノ糖尿病センターの糖尿病外来
15:50ステノ糖尿病センター見学

第3日−11月24日
08:452日目の復習
09:00糖尿病チーム成功の基礎
09:45グループワーク:糖尿病クリニックの構築
(長所と短所)
11:202型糖尿病への多因子的介入
12:05ディスカッション
12:20バイキング形式による糖尿病の昼食
13:15グループワーク:なぜ患者は医療者側の言う
ことを実行しないか
14:15グループワーク発表
16:15糖尿病の未来の治療と予防

9.jpg 10.jpg


参加者の一言

  小森副院長
line.jpg
 3日間に渡り、講義、グループワーク、ディスカッションンなど盛りだくさんな内容でした。もちろんすべて英語なので、あまり理解できなかった方もいると思いますが貴重な経験であったと思います。小生が感動した事は、ステノの糖尿病スタッフの糖尿病治療に対する情熱の深さでした。我々に対する講義の態度からもそれは十分に感じ取れました。糖尿病患者様のQOL改善のため、糖尿病スタッフ間のディスカッションをとうして、何かもっと良い方法はないかということを常に考えながら診療にあたっているようです。当院としても見習うことが多くあると感じました。当院から参加したスタッフは太田西の内病院のスタッフと共に、よく勉強し、国際交流の面でも十分役割を果たしたと思います。またノボノルディスクファーマのスタッフの方々には大変お世話になりました。

   鈴木婦長
line.jpg
 今回の研修に当たり、週に1度ですが英会話を習い始めました。スムーズに挨拶が出来るようにアンチョコも用意し、「いざ、デンマークへ。」研修中はやはり、英語が飛び交い「場違いな所に来てしまった。」と怖気ついてしまいました。しかし、何もかもが初めてで新鮮な気持ちで、研修を受け数多くの感動・他国の方々との触れ合いのなかで大変貴重な体験をする事が出来光栄に思いました。英会話には苦労の毎日で同行した小森副院長は、ウンザリしていたことでしょう。「ゴメンナサイ」今回の研修での感動や体験を活かし今後の患者様への指導に役立てられるよう頑張ります。

  福士看護婦
line.jpg
 ステノ糖尿病センター研修会に参加して感じたことは、糖尿病の治療や看護が日々進歩しているということでした。常に新しい知識を得ていかなければ患者様によりよい看護を提供できないと思いました。今回。実際にインスリン自己注射、血糖自己測定を体験し、患者様の大変さが少しは理解出来ました。今後、この貴重な研修で得たことを看護に生かしたいと思います。

  小川薬剤師
line.jpg
 今回、糖尿病のチーム医療の研修でデンマークへ行かせて貰い、デンマークや研修に参加していた他の国の糖尿病治療に対するスタッフの考えを色々知ることができ大変良い経験になりました。医療保険の制度など医療状勢が各国違う中でも共通していた事は、患者さんに治療を理解してもらい、続けてもらう事に苦労しているという点でした。研修は全て英語で行われ言葉の壁で大変でしたが、ステノのスタッフや他の国の参加者も親切で大変友好的で3日間の研修を無事終えることができました。デンマーク自体の印象はチーズ、ビールなどもおいしく、又町並みも(特に建物が素敵でした。)美しく、個人的にももう一度訪れてみたいところだと思いました。

 杉岡管理栄養士
line.jpg
 この研修でいろいろなことを知り、また体験する事が出来ました。文化や食習慣に大きな違いはありますが、近年の日本の食事内容も欧米化してきており、参考になる部分が沢山ありました。デンマークの特徴としては、野菜が少なく(収穫量が少ない)、チーズをよく食べる事です。野菜が足りない為食物繊維不足になりますが、オートミールやライ麦パンなどから食物繊維を積極的にとるという工夫をしておりました。栄養指導は、日本と同じように患者様に食事内容を記録してもらうシステムを取っていますが、食事記録表を見ると、間食を含めて1日8食が基本のようです。日本との食生活の大きな違いに、大変驚きました。この3日間の研修でデンマークでの糖尿病治療を学び、国内研修では出来ない貴重な体験をしました。今回の研修で得た事を、これからの栄養業務に役立てて行きたいと思っております。