第66回アメリカ糖尿病学会記
内科部長 種田 紳二


 


6/8-6/14アメリカ糖尿病学会がワシントンDCで開かれ、出席いたしましたのでご報告します。中山糖尿病センター長と内科部長の種田が発表のため参加しました。ワシントンDCで開かれたのは15年ぶりで、くしくも両名とも前回にも参加していましたので、今回は特別な感慨がありました。

 
ワシントンの中心にあるコンベンションセンターという巨大な会議場で行われました。地下鉄直結の便利のいいところですが、中があまりに広すぎて迷ってしまいます。4階建てですが、先日の日本糖尿病学会の開かれた東京国際フォーラムの倍くらいある感じでした。
今回発表したのは、ミトコンドリア脳症という特殊な遺伝子異常を持っているために糖尿病や難聴、その他の神経、精神症状を持った患者さんの症例報告でした。リサーチはほとんどが三沢内科部長が緻密に行ってくれたもので、今回はそれに一部お母さんの症例を付け足したものです。
確かに、発表してきたという証拠を中山先生に撮影してもらいました。(注。一応撮影は禁止となっています。)
時間内での口演発表は比較的少なく、発表の多くはポスターと朝と夜開かれるセミナーが中心です。近隣のホテルで行われますが、これは朝の5:15を示しており、向こうのホテルでやりますというものです。もちろん真っ暗で、物騒で危険だなどとは言わず、大勢の人が集まってくる。皆さん大変熱心です。
中では、コーヒーやベーグルなどを食べながら、”ちゃんと”セッションが行われています。この日は入院中のインスリン治療についてです。スライディングスケールを無計画にやるとかえってコントロールは悪くなるなど話されていました。
英語では地下鉄のことをsubwayといいますが、そこそこでローカルな言い方があり、ワシントンではmetroといいます。核シェルターになるなどといわれるほど地下深い駅から乗ります。

アメリカの地下鉄は犯罪の温床と言われるところも多いですが、ワシントンのmetroは比較的きれいで安全なようです。10数年前私が暮らしていたアメリカと比べるとホームレスも少なく、ごみも散乱していず、やや安全になったようでした。アメリカの人は相変わらず、太った人は多いですが、スーパーに行くと、ちょっとした変化が見られました。たとえば、パックつめの牛肉も以前はこんなのを何日で食うのだろうかと思うくらい、分厚い大きな切り身ばかり売っていたものですが、今回は日本みたいな薄切り肉が売っていたりします。
また、アメリカのケーキといえば、見た目はキレイですが、超大型で超大量の砂糖を使い、食べると頭が割れそうになるというのが特徴でした。でも、今回は甘さも若干控えめで、1ピースもやや小ぶりになってきました。アメリカ人もやっと、健康志向という言葉がわかってきたのかと思いました。ただ、その分値段が割高になったようでした。

治療のほうで今回のトピックスは@吸入インスリンAGLP-1製剤B自己測定連続測定器の3点です。吸入インスリンは今年2月にアメリカで薬としての認可を受けました。インスリンを注射するのではなく10倍量程度のインスリンを吸入して(超)速効型インスリンの代わりとして用います。
GLP-1製剤は当院でも臨床治験中ですが、食事の後に直ちに腸から分泌され、すばやくインスリン分泌を促すという、食べ物とインスリンをつなぐ働きをするホルモンです。血糖値が高いときのみ働くので低血糖の危険が少ないという優れものです。まもなく認可されるそうです。
連続自己測定はインスリンポンプのようにお腹につけて5日連続血糖値を測定するというものです。5日たったら付属品を取り替える必要あり、値段も高価ですが、血糖値の不安定の人への治療には大きな武器になりそうです。興味のある方は私を捕まえて聞いてください。   記.種田