オーストラリア研修報告


ロイヤルプリンスアルフレッド病院



200586日〜13日まで、当院より,医師(写真一番左:種田),看護師(その次左:長谷川・枝),薬剤師(その次左:久嶋)と、今回はじめて院外スタッフとして北大病院看護師(一番右:中泉)が参加し、シドニーのロイヤルプリンスアルフレッド病院への研修に行ってまいりました。



シドニー大学に付属するロイヤルプリンスアルフレッド病院は重厚なヨーロッパ調の建物の中
1992年に糖尿病センターを設立しシドニーが属するクイーンズランド地区の糖尿病の中核医療施設として有名であります。



オーストラリアは日本型の公的医療保険を中心とする医療制度ですが、
日本と違い、患者さんは地域の開業医にかかり、そこからの紹介で公的な専門医にかかるというシステムです。この病院は1980年に糖尿病センターを設立し、多くの開業医より紹介を受ける糖尿病の専門機関であります。


年間約
3000人の患者が紹介されてきて、ここで診察を受けまた地方の開業医に戻っていきます。この多くの患者に対して診察をし、治療方針を決め,あるいは修正し、開業医に伝達をするのがYu教授と看護師、栄養士足療法士等のスタッフたちです。


特にユニークなのが,この業務のほとんどを実際に担当している看護師たちです。まず,看護師が患者を診察します。


これらは看護婦さんの7つ道具で,これを使って、合併症を把握します。



これは振動核を測定する器械です。問題点を明らかにし治療方針を立てた後、Yu教授がやってきて眼底鏡を覗いたあと、治療方針をチェックし、開業医への返事をまとめ、看護師は必要な他業種との連絡をとり、カルテをまとめます。このように看護師の役割と権限が強く、日本の制度では許されていないことを看護師たちは次々とやっていきます。インスリン注射をするかどうかを判断してYu教授が来る前に注射指導が終わっているなど日本では考えられないことです。看護師には制度上4階級あって、一番上のナース・プラクティショナーになると独立開業して処方もできるとのことです。この看護師たちが生き生きと活躍する姿が非常に印象的でした。


この病院には足療法の部署があり、
3人の足療法士と非常勤の医師たちが対応しています。多くの潰瘍の患者が訪れていました。その他日本では少ないシャルコー関節が多いのが特徴で、
肥満が多いためと考えられています。











これは潰瘍を鉛筆で大きさをなぞって、それを透明フィルムでカルテに張ったものです。








広大な土地をもつオーストラリアの地方の患者は適切な足の治療を早く専門医に見てもらうことだできません。このため、オーストラリア政府も足病変対策は国家事業としており、テレ・メディスンという地方の開業医と中核病院の専門医をパソコンでつないだプログラムに予算をつけ、この病院でもそのプログラムに参加し、地方の開業医に指示を送っています。


見学の傍ら、私たちも当院の現状を紹介してきました。種田医師が当院の概況枝看護師・長谷川看護師が当院の教育入院システム、久嶋薬剤師が、糖尿病教育チームにおける薬剤師の役割を紹介。北大の中泉看護師が北大病院の糖尿病患者教育について紹介しました。オーストラリアでは教育のみの入院は制度上なく、お国柄の違いについてのやり取りが続きました。

















この病院の薬局部門も見学できました。薬局長のテリー・モンロー氏。とても丁寧に対応していただき感謝しています。病床数700床に対し薬剤師数は26名。病棟常駐専門と調剤専門で約半分に別れて業務しています。病棟常駐薬剤師に癌専門等はいますが、糖尿病療養指導専門はいません。日本における糖尿病療養指導の薬剤師の役割は全て看護師が行っています。病棟常駐薬剤師の中心業務は、薬剤の相互作用、副作用等を毎日チェックし、医師へ報告する事です。配薬業務は主に看護師が行い、薬剤師は補助的に配薬をします。薬剤師が配薬や服薬指導を行っても、指導点数がとれず、無償サービスとなってしまうそうです。オーストラリア糖尿病協会のNDSS(国家糖尿病サービス計画)では、糖尿病患者として様々なサービスを受けることができるカードについて紹介している用紙を配布しています。カードを所有する事で血糖自己測定器の電極、インスリンの注射器と針等の割引提供等を受けることができます。糖尿病治療の継続を目的としたこのカードへの入会促進の為に、町の薬局でもこの用紙を配布しています。協会員は、オーストラリア全体で15万人いるそうです。

 

今回はじめて院外スタッフとして北大病院より病棟勤務の中泉看護師が参加。「参加して良かったこと・得たことは、異文化にある方々に対するアプローチの実際という点でいろいろなことを見学でき、これまで以上に患者さんを多角的に、広い視野で見ることの重要性を学ぶことができたことや、日本とは異なった病院、医療システムが理解できたことです。」と。参加者にとっても当院にとってもいろいろな意味で実り多い研修でした。