シンガポール海外研修報告

2011/6/136/18

参加者:内科医師 土田 健一  病棟看護師 斉藤 雪枝、平間 陽子

 

今年は、Singapore General Hospital(SGH) Diabetes Centerへ研修に行って参りました。

シンガポールについて簡単に御紹介致しますと、人口:約470万人 (札幌市:約192万人)、面積:707.1平方km (札幌市:1,121.11平方km)、公用語:英語、マレー語、北京語、タミル語です。

 

シンガポールの医療事情についてですが、シンガポールには、日本のような公的医療保険制度はなく、基本的に医療費は個人負担の原則が貫かれております。同国民と永住権保持者は、自動的に厚生年金の一種である中央積立基金(Central Provident Fund:CPF)の積立金を給与から天引きされ、この積立金の一部を必要に応じて医療費として使用することができるシステムとなっております。

 

医療機関については、政府が管掌する公的病院と自由診療の私立病院が存在します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンガポールでは、外来一次診療(初診)の約8割をGPGeneral Practitioner)と呼ばれる一般開業医又は私立病院が担当し、残り2割の初診患者は政府系ポリクリニックを受診します。その後入院の必要があれば、公的病院或いは私立病院に行くことになりますが、一般シンガポール市民の大半は、安価な公的病院を利用しています。一方、富裕層や先進国からの外国人の大半は、ホテル並の設備が整った一人部屋のある私立病院に入院します。日本と同様、医療機関の受診はフリーアクセス制となっており、患者はどの医療機関を受診してもよいこととなっています。

 

 

 

 

 

糖尿病事情についてですが、シンガポールの成人糖尿病患者数は30万人で、糖尿病予備軍は40万人を数えます。人口比でみると、1975年には1.9%でしたが、今では10%を超えており、日本と同様糖尿病患者の増加は国家的な問題となりその対策に迫られております。

また日本とシンガポールの糖尿病診療の相違についてですが、1)肥満に対する外科手術(Bariatric Surgery 224時間持続血糖測定(CGM)システムの違いが目に付きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BMI35kg/2以上であり、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝性疾患を有する患者さんに対してBariatric Surgeryを積極的に行なっておりました。Bariatric Surgeryにより、体重は平均で30kg減少し、全死亡率も15年間で29%低下することが示されております。またインスリン使用者も含め糖尿病患者の1/3が退院前には糖尿病が寛解するとのことでした。

CGMシステムについてですが、日本では電波法の問題によりワイアレスのCGM機器の導入はできない状態ですが、シンガポールはワイアレスのCGMが普及しており、さらに1型糖尿病患者にCSII(インスリン持続皮下注入療法)を施行する際は、CGMシステムを併せ持つタイプのインスリンポンプを使用しており、そのときの血糖値に応じて医師の指示によりインスリン量の調節をより緻密に行なえると伺いました。また現在は開発段階ですが近い将来にはCSIIとCGM一体型のポンプシステムで、血糖値に応じて自動的にインスリン量が調節可能ないわゆるClosed-loop systemが有望であると考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

その他、脂肪を招くココナッツミルクを使用する料理が多い。さまざまな民族が混在しているため、食文化も多様である。宗教的なタブーもあり、政府の介入や統一が困難であることが、糖尿病治療にとっても重大な問題となっているということでした。

 

シンガポールではホーカーズと言われる安いフードコート(屋台街)がたくさんあり、外食をした方が自炊するよりも安いという点、また、共働きが常識であるという点から3食外食が当たり前だそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終日一日シンガポール市内観光をし、マーライオン、マリーナサンズ、ラッフルズホテル、セントーサ島を満喫してきました。シンガポールは日々発展しており、人々が生き生きとしてたくさんのパワーを感じる国でした。ぜひ皆さんも訪れてみてください。