学会報告:第59回日本糖尿病学会年次学術集会

 

本年も5/19-21京都において第59回日本糖尿病学会が開催された。大都市京都をもってしても15000人の参加者を1カ所に集めることは容易ではなく、
宝ヶ池の国際会議場と平安神宮のとなりの都メッセと2カ所に分散して開催。
そこをシャトルバスでつなぐという形をとった。シャトルバスはあまり便が良くなく、その間も時間がかかるのでなかなかすべてに参加するのは難しかった。

内容的に最も注目されていたのはEnpareg-outocomが発表されたばかりのSGLT2阻害薬に関することであり、副作用の全容も明らかとなり、
当初にこの薬剤に抱かれていた懸念が徐々に払拭されつつある空気が感じ取られた。
その他インスリンの新薬・GLP-1製剤の新薬も発売され、それぞれの知見が発表されていた。
数年先までの新薬のラインナップもほぼ出揃い、これから糖尿病治療の新時代という感じが漂っていた。
当院からも日常診療で超多忙の中口演2題・ポスター4題が発表することができ、院長と副院長が座長として参加した。

発表者の弁

菊地 実
@題名
インスリン依存性限局性アミロイドーシスの可逆性についての検討 
〜MANDA STUDY 3~
A内容
【目的】インスリン依存性限局性アミロイドーシスの可逆性を調査した。
【対象および方法】対象は1年以上の経過観察をし得た16例とし、退縮の評価は、超音波検査にて皮下硬結の大きさ
(縦経、横経、深さおよび体積)を計測し、インスリン投与中止前後で比較した。
【結果】注射中止後、完全に消失した症例はなかったが縮小を示した。
【結語】インスリン依存性限局性アミロイドーシスは縮小効果を認めるが不可逆性の可能性が高い。
B感想
インスリンボールで有名な永瀬先生から質問があり、セッション後もディスカッションができて有意義であった。

土田健一
@実臨床下におけるSGLT2阻害剤 トホグリフロジン長期投与の 有効性と安全性の検討
A若年肥満2型糖尿病患者に対し、SGLT2阻害薬トホグリフロジンの効果は52週間の
長期間持続しHbA1c-1.58%の低下、体重減少-5.23kg認めた。52週間の長期間脂質
代謝、尿酸、肝機能、血圧などのmetabolic parametersの全般的な改善を認めた。
B最近になり、SGLT2阻害薬の心血管合併症、心不全、全死亡の抑制、腎症進展の
抑制作用など立て続けて、論文が発表されており、今後その作用機序を含めた解明が
期待される分野である。

中野玲奈
@2 型糖尿病患者におけるリキシセナチドと基礎インスリン製剤併用療法の有用性と安全性ならびに患者満足度の前向き比較研究
A強化インスリン療法からBPT療法への切り替えに関する報告を行いました。
B座長からの質問もあり、今後研究をまとめる際の参考になりそうです。

葛葉 守
@「インスリン療法患者へのリラグルチド併用における評価」
Aインスリン療法中の患者へ、リラグルチド(商品名:ビクトーザ)を併用することで血糖コントロールなどの改善が見られた事について発表しました。
B他の施設においても同様な内容での演題が多く見られ、結果、評価などについての情報交換ができ良かったと思います。

坂東秀訓
@ Vater乳頭癌にて膵島十二指腸切除術後、長期間経過後に明らかとなった膵性糖尿病の1例
A症例は80歳女性、膵腫瘍の診断にて1994年3/11に膵島十二指腸切除術(PD、以下PD)を施行され、病理診断にてVater乳頭部癌の診断、
2000年7月に近医にて糖尿病の診断にて内服加療開始、2006年頃から血糖コントロール悪化傾向で、HbA1c8%以上となり、2011年11/24当院初診、
随時血糖304mg/dl,HbA1c8.1%にて12/14当院入院。膵外分泌酵素及びPFDテスト44.3%と膵外分泌能低下、グルカゴン負荷試験にて血清CPRが負荷前
0.34、負荷6分後0.84 ΔCPR0.5(ng/ml)とインスリン依存状態となっており、リスプロ12単位/日、グラルギン2単位/日にてCGM(持続血糖モニター)上、
夜間低血糖が確認された為、インスリンリスプロ14単位のみとした。本症例は術後17年を経て膵外分泌能低下、インスリン依存状態を認めた貴重な
症例と考え報告した。
Bこれまでに、膵炎がベースにないかどうかという質問あり、手術所見、組織上それらのものは認められなかったこと、過去の膵炎については、
非常に古い例であることから、わからないことを答えた。
自分のセッションの前後で多かったのはIgG4関連疾患としての自己免疫性膵炎の発表が多かった。数年前から内科学会でもHOTとなった分野であり、
全身疾患との関連が提唱されている分野で、診断基準の中にIgG4値も含まれ(保険収載)されている為、、Dry eye、Dry mouth、硬化性胆管炎、
後腹膜線維症等IgG4の関連が疑われる場合、考慮に入れた方が良いと思われた。
又、自分の症例からは、過去に膵手術を施行された場合は、その範囲にかかわらず、糖尿病の発症を常に念頭におき、定期的なフォローアップが非常に
重要であり、問診をとる時の既往歴でも、膵手術の有無の確認は必要と思われた。
最後に、近日小生が本学会の前後で聴講してきた日本内科学会年次学術講演会および生涯教育講演会では進行肺癌に対するチェックポイント治療
(抗PD1抗体)がHOTな分野となっている。本薬剤は現在肺癌および悪性黒色腫において適応となっているが、1型糖尿病を発症する可能性のある薬剤として
糖尿病学会でも注意喚起されている。又、今後、適応拡大される見込みである。問診の際の癌の既往歴のチェックがより重要になる旨付け加える。

萩原誠也
@「インスリンアミロイドーシスに対し硬結部切除を施行した2型糖尿病の一例」
Aインスリンによる皮下硬結は同部位への繰り返しの注射で形成される可能性が高く,治療の効果を妨げてしまう厄介な合併症です.発生機序などは未だ
に研究段階にあります.
B今回も熱心な討論が行われ大変勉強になりました.早速日々の診療に生かしていきたいと考えております.いきたいと考えております

種田紳二
@ インスリン デグルデク/インスリン アスパルト(IDegAsp)は糖尿病罹病期間にかかわらず空腹時血糖値や低血糖の発現頻度を低下させる
AIDegAspを使ったいくつかの臨床成績を総合編集したpost-hoc,pooled解析によりIDegaAspは従来の混合型インスリン注に比べて、罹病期間の長さに
かかわらず少ないインスリンで夜間低血糖を減らせることができた。
B罹病期間とインスリン用量についての質問があった。有意義なディスカッションができた。